株式譲渡による M&Aを成功させるためには、最終ステージのクロージング手続きを円滑に進める必要があります。
株式譲渡によるクロージングとは、譲渡側から譲受側へ株券や株主名簿、その他の重要物の引き渡し、そして譲受側から譲渡側への譲渡代金の支払いをもってM&Aを終了させる手続きです。このクロージング手続きのためには、前提条件が大きく関わってきます。

クロージングに先立つ前提条件の留意点

 
クロージングに必須の前提条件ということは、この条件が満たされないと、クロージング手続きが行われない、ということです。したがって、前提条件の設定には、留意すべき点がいくつかあります。
まず、実施すべき前提条件の範囲を限定し、明確にしておくことです。またその内容についても、具体的かつ客観的なもので、当事者の一方に偏った主観や思い込みのようなものは、極力排除しておく必要があります。

★具体的な前提条件の内容と留意点について

クロージングの前提条件で、一般的なものについて内容や留意すべき点を見ていきます。
◎表明保証した事項が正しいか
M&Aプロセス上のある一定時点において開示した事実が真実かつ正確であると表明保証したが、その通りであることの確認がされているか。
◎契約事項が実行されているか
クロージングまでに履行すべき義務事項は実行されているか。
◎業務上の許認可の取得はされているか
M&Aの内容によって必要とされる行政許認可の取得は実行されているか。
◎独占禁止法上の届出等がされているか
M&Aの規模によっては、独占禁止法の規制の対象になります。その場合、必要な届出は行われているのか。
◎重要な役員や従業員から同意は得られているのか
M&A後における事業継続のためには、重要な役員や従業員が必要ですので、その残留か退職かの確認はとってあるのか。
次にクロージング手続き上の留意すべき点を見ていきます。

クロージングの際の留意点

クロージングの際の手続きの流れは、「株式譲渡承認手続き」、「株券などの引き渡しと譲渡代金の支払い」、「株主名簿の名義書き換え」、「重要物等の授受」などとなっています。
このなかで重要な項目は、株式譲渡承認手続き、株券、株主名簿の名義書き換え、その他の管理です。特に株券と株主名簿の書き換えは、クロージングの成否を左右する重要な項目ですので、これらを中心に見ていきます。

★株式譲渡承認手続きにおける留意点

中小企業のほとんどが譲渡制限株式ですが、実際、譲渡制限規定を設定しているか登記簿で確認しておくとよいでしょう。
承認申請書は、譲渡側・譲受側のいずれが行うのか、法令上はどちらからも申請できますが、実務上、譲渡側が申請するようです。

★株券などの引き渡しと譲渡代金の支払い手続きにおける留意点

株券発行会社であれば、株券と必要な書類(クロージングドキュメント)のすべてが揃っているか確認します。譲渡代金の振り込みを確認後、これら一式引き渡すようにします。

★株主名簿の名義書類手続きにおける留意点

一般的には譲渡側のほうで名義変更の手続きを行うようにします。そして原本と相違ない旨の記載された書面に代表者印を押し、変更後の株主名簿を譲受側へ引き渡します。

★その他重要引き渡し手続きにおける留意点

会社の実印その他の印鑑、カード、通帳、登記簿、受領書などの引き渡し、授受が行われますが、留意点としては、通帳はクロージング日前日までの残高が記帳されたもの、簿記簿も最新のものにすることです。また、すべて引き渡し、支払い等終了した後に、双方が受領書の交付を行うようにします。

★株券及び株主名簿について留意すべき点

株券や株主名簿などは、クロージングに際して引き渡されるもののなかでも特に重要ですが、中小企業においては、これらに対する意識があまり高くありません。
現在、会社法では、株券不発行が原則であり、実際中小企業の多くが発行しておりません。ただ、一部企業では、発行する旨規定していることもあります。その場合、実際には発行していなくても、引き渡しの際には株券が必要になります。新たに株券を発行し交付するか、定款に発行する旨の規定の廃止を登記する必要があります。
一方、株主名簿については、もともと中小企業では、株主の変動がほとんどないため、本来備えておくべき株主名簿がない、あっても必要事項の記載がないといった不備が多く見受けられます。クロージングに際しては、しっかりした株主名簿を作成し、交付する必要があります。
クロージング手続きはM&Aの最後の締めくくりとして重要なプロセスです。事前手続きから一つ一つ確認しながら、確実に実行していくことが大切です。